高畑勲監督のジブリ作品の魅力…宮崎作品しか知らないファンに捧ぐ

また一人、巨匠が亡くなってしまった。

宮崎駿と一緒にジブリを牽引し、宮崎駿に愛された高畑勲

ピンと来ない人は、きっと「ジブリと言えば宮崎駿」って人。
宮崎駿も世界観は唯一無二で、興行収入も半端ない。
対して高畑勲は、めっちゃ予算かけたのに興行不振とかぶっちゃけパッとしないイメージを持たれがち…。
キャッチーではないんだよ。可愛いキャラは出てこない。
でもね、また宮崎監督作品とはまた違う味わいもあるんだよ。

アニメを自らガンガン書くアニメーター出身の宮崎駿とは違い、自らはアニメを描かずにガンガンスタッフに描かせた超スパルタとしても知られている高畑勲。
そのアニメに対する姿勢はストイックで、上映が遅れたり、費用が膨大にかかったりとかザラ。

ファンタジーな宮崎作品とは異なった作風の高畑作品をジブリ映画に限定して今日はご紹介です。
ハイジとかも好きだけど、私はややジブリオタクなので。




火垂るの墓(1988)

ご存知、「なんでホタルすぐ死んでしまうん。」である。

原作は作者自身の戦争体験を基にした短編小説。1967年に発行されて直木賞も受賞している。

第二次世界大戦中の神戸が舞台で、それはもうジブリ史上最高に悲しい作品
「見るのが辛い」と思い、繰り返し見られない、というか避けて通って来た人もいるんじゃないかな…。

作中は理不尽なことだらけで、でもそれは全部戦争のせいで…ともう言い表せないほどの悔しさしか抱かない

親戚の家を飛び出して14歳と4歳だけで生きようとするんだけど、確かに親戚の家にいた時よりは2人とも生き生きと生きていながらも、幸せだったとしても、やはり社会からはみ出してしまったから結果としてのたれ死んでしまう。死んじゃったらやっぱり不幸だよ。

これって戦時中だけの話?現代の人間関係・社会生活にも繋がるものもあるんじゃないの?というのが高畑監督のねらい。
これはやっぱり目を背けず見ておかなくてはいけないストーリーだよ。

何よりしんどいのは、節子のモデルとなった原作者の妹のエピソード。本当にしんどすぎて書く気にもならないからWikipedia見てください…。

宮崎監督の『となりのトトロ』と同時上映で、共通するキャッチコピーは「忘れ物を、届けに来ました。」
平成生まれたちもこの2作品から昭和の忘れ物をちゃんと受け取ろう。

4月13日(金)の金曜ロードショーで放送されるので、まだ見たことない人ももちろん見たことある人も是非チェックしよう!

おもひでぽろぽろ(1991)

舞台は1982年の山形と1966年の東京。

『火垂るの墓』同様に、主人公が回想する形でストーリーが進む。

大人になったタエ子が山形の親戚の家に滞在する間、小学5年生の自分の思い出を「ぽろぽろ」と細切れに回想していく。
間に入る小学5年生パートは淡い色合いで描かれているのも特徴。

東京で育ち、田舎に憧れたタエ子。山形で自然とトシオ、そして小学5年生の自分と出会って見つめ返す自分探しの時間。これは「自立」のストーリー。
ひょっこりひょうたん島とか、当時流行った歌とか、たくさんでてくるので昭和ノスタルジーも感じちゃったりもして魅力的な作品です。
とは言え、時代は違えど小学生あるある満載で、誰が見ても懐かしい。

その描写はアドベンチャーではなく、繊細で微かで、退屈だと思う人もいるかもしれない…けど、私はすごく好き。

また、大人パートのタエ子とトシオは、キャストである今井美樹と柳葉敏郎に寄せて描かれていて、更に大人パートだけはアフレコでなく、先に録音するプレスコで録られている。なんだかキャラクターたちの動きがリアルで、ドラマを見ているよう。

ちなみに小5パートに出てくるおデブ男子の声は高橋一生だぞ!!

平成狸合戦ぽんぽこ(1994)

舞台は昭和40年代に開発中の多摩ニュータウン。
これは次作の『耳をすませば』の舞台でもあり、本作ラストカットの東京の夜景から、次の物語が始まるように『耳をすませば』もスタートする。そこも繋げて見てほしい。

高畑監督には珍しいファンタジー作品だが、取り上げる問題はとても現実的な話。
結局化けられるタヌキは人間として生きているって結末もなんだかやりきれない。

声優が結構豪華で楽しいよ。
あとエンディングの『いつでも誰かが』がとても好きです。エモみ。

ホーホケキョ となりの山田くん(1999)

現在は『ののちゃん』として知られる新聞4コマ漫画が原作。
短編をつなぎ合わせて映画にしたのが本作品。4コマを長編映画にするってすげーな。

『もののけ姫』の「生きろ。」とは対極をいくのんびりとしたゆるさが特徴。笑って泣ける映画だよ。
あんな水彩風のゆるい絵柄ながらも、実はジブリ初のデジタル制作であり、セル画の数も通常の3倍近いというのが驚き。高畑勲のストイックさが現れている…。

実は膨大な制作費用をかけた割には興行不振で大赤字、テレビ放映は一度きりしかされたことがない。
うーん追悼と銘打ってもう一度放映してくれないかな…。私もちゃんとは見られてない…にわかです…。

矢野顕子の歌がすごく良いよ!

▼いい感想書いてるブログがあるじゃん!と思って読んでたら、サークルの先輩であるはっしー先輩のブログでした。さすがすぎるよ。

かぐや姫の物語(2013)

原作はもちろん『竹取物語』。
帝の長いアゴが何より話題になりましたね!!
帝で笑うためだけでも見る価値あるよ…ほんと笑っちゃう…。

『となりの山田くん』同様、水彩風のタッチが特徴。
原作に忠実ながらも、オリジナルキャラとストーリーが盛り込まれていて、高畑監督ならではのかぐや姫への解釈が加えられているという感じ。
姫の美しさ、可愛らしさはさることながら、琴の音色や独特な背景の動き、アートとして楽しみたい作品
ちなみに美術監督はあの『もののけ姫』以来の男鹿和雄

あとね、田畑智子演じる女童が、なんかめっちゃ可愛いのでずっと見ちゃう。猫みたい。これ超見所ね!!

高畑勲作品はしみじみと

宮崎作品を「動」とするなら、高畑作品は「静」のようなイメージ。

ゆったりと作品の空気感を楽しんでほしい。

もちろんそれぞれ主題歌も名曲揃い。

▼増補版は『風立ちぬ』や『思い出のマーニー』など最新の作品まで収録されている。私が持ってるの旧バージョンだ…。

「退屈そうだ」と思って敬遠していた人も、大人になってまた繰り返し見るたびに印象が変わっていく。
そんな高畑勲の魅力を是非これを機に感じてほしい。

あぁ、まだまだ巨匠の作品を見たかった。本当に残念だ。ご冥福をお祈りします。

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