実写版「耳をすませば」原作オタ兼ジブリオタの感想

俺たちの聖司は神聖。実写版耳すまは一体どうだったんだ。
そう思いながら見に行くほどの勇気は持てず時間が経ってしまったみなさん、おはこんばんちは。
原作・柊あおい先生ファンかつ、ジブリヲタのえつをです。
公開直後に実写版を見て、これ書いて出すのに1ヶ月以上かかりました。まー筆の遅ェこと。

ジブリパークの開園が盛り上がりすぎ、すっかりジブリファンにすら忘れられた「耳をすませば」実写版。
(ってかあんまり力入れてプロモーションしてなかったよね?)

ジブリだけならまだしも、こちとら原作ファン。耳をすませば最古参。耳すま老人会。
解釈違いに怯えながらもこりゃ見るわけに行かんだろう……と半ば意地でひとりレイトショーに足を運んだ次第である。

というわけで、所感を書き連ねていくんだけど、ちょいちょい「ちなみに原作はこうなんだぜ?」というマウンティングが入りますので悪しからず。
オタクが早口で喋ってると思って読み流してもらえたら結構。

以下、先に言っとく。

おすすめできない人

  • ジブリアニメ耳をすませば”だけ”が好きすぎて何百回も見てる人
  • 解釈違絶許過激派
おすすめできる人

  • 2人のその後が気になりすぎて二次創作での解釈を見たい人
  • 原作やジブリアニメをさらっと履修しただけで記憶が曖昧な人

若干のネタバレあり。




そもそも原作とジブリアニメも全然違うからね

先に原作はこうなんだぜ、の大筋を伝えておきます。

  • メインストーリーは中一、番外編で中三
  • 聖司くんが目指すのは画家、別に遠距離にならない
  • 雫の姉・汐と、聖司の兄・航司が付き合ってる
  • ムーンとルナ、二匹の黒猫(追いかけるのはムーン)

実写版は一応原作の流れも汲んでいて、絶妙にハイブリッドだった。

これは雫の「おもひでぽろぽろ」


↑このクッション出てきてほしかったけど、似た形の円柱クッションなら出てきた。

実写版は原作漫画・ジブリアニメそれぞれを引き継ぎながらも、オリジナル要素も入ったアフターストーリー。
舞台は98年、25歳になった主人公たちと、88年の中学時代の回想を交互に展開するというものです。

原作のりぼん掲載は89年なので、時代背景はほぼ原作そのまま。
(ちなみに、ジブリアニメでは「平成たぬき合戦ぽんぽこ」のエンディングとリンクさせる形で、95年の多摩ニュータウンを舞台にしてる。)

過去の純粋な頃の約束と対比した大人のストーリー展開が、まるでジブリ映画「おもひでぽろぽろ」のよう。(ジブリオタ解釈)

余談だけど、ジブリ版は親戚の女の子のりぼんを読んだ宮崎駿が脚本に書き起こし、近藤喜文監督で映画化。
その近藤喜文は「おもひでぽろぽろ」ではキャラデザ担当でした。これは何も関係ない話です。覚えなくてよろしい。

舞台は平成、でも令和が見えちゃった


実写版の時代設定は令和でなく、88年と98年でなければいけなかった。んだと思う。
なぜならおじいちゃんとバロンと出会い、恋人と引き裂かれる原因が戦争である設定はズラすことができないから。
そして、スマホのない不便な時代じゃなければ成り立たない遠距離恋愛だから。

テレフォンカードの残数を気にしながら公衆電話で国際電話をかける。
エアメールで時差のある手紙のやりとり……。
いいね、ここはアニメファンも嬉しいポイントじゃないかしら。

ただ欲を言えば、ジブリファンに向けてこの令和に実写版をするなら、もう少しこの90年代っぽさを堪能したかった。かも。
90年代カルチャーに”エモ”とか”チル”とか感じる現代の若者的視点で言えば。
地球屋に辿り着く道中は一瞬で、そこはやや現実離れしたヨーロッパっぽいファンタジーな風景。
98年の夕子とルームシェアする自宅も、なんだか家具が小洒落すぎてて、小さな出版社勤務の給料では非現実的な感じ。

そして、パソコンのない灰色のオフィスに職場の先輩役・松本まりか様。
彼女の美しさは安定だったけど、ポニーテールの後頭部の髪がちゃんとふんわり引き出されてて、それは完全に令和のオシャレだった。
すだれ前髪じゃなくて普通にシースルー前髪に見える。ヘアメイクさん、頼むよ。

どのシーンも「令和です」と言われても気がつかない程度の平成。
もうちょっと前の平成に連れて行ってほしかったなぁ。
ジブリ版の団地のような、あの雑然とした90年代が見たかった。
(原作は一軒家だし、少女漫画だからそこまで時代を強調した描写はないんだけど)

あっ、令和っぽくないのは上司のパワハラだけでした!
あと「心の音」がするシーンではごろもフーズみたいな雫(雫だけにね〜)が落ちるCGが入るのも、めっちゃ懐かしかった!!

「音が聞こえる」「最近聞こえないの」「じゃあ書いてみればいいじゃん」の流れは原作を元にしてます。
それが大人パートにも活きてて、今回の軸になってます。

決定的な違い「翼をください」とチェロ


なんで「カントリーロード」じゃないんだ!
という声が多分一番多いと思うけど、あれはジブリのものだからね。

あの日本語訳詞は鈴木敏夫の娘がたったの5分で作詞したもの。
そのへんは簡単な大人の事情がわかればここは諦められるはず。

というわけで、合唱部の後輩たちに贈る「カントリーロード」の訳詞のくだりはありません。
今回は「翼をください」を合唱コンクールで歌ったという設定。

ちなみに原作ではそもそも歌の要素は皆無。
なので実写で突然歌い出されると……アニメと違ってどうしてもファンタジー感が浮いてしまいがち。
急にアカペラで歌い出す実写版冒頭。
ちょっと小っ恥ずかしくてむず痒い人もおるかもしれん。私はムズムズした。

中盤の歌唱シーンは、中学時代と現代がシンクロしててグッとくる演出だったけど、後半子役と一緒に並んで歌うのはちょっとまたムズムズムズ!!!
愛は時空を超える!もはやSFだよ。

聖司、おま本当に童貞か?


これはファンタジーで超純愛な遠距離恋愛。
良く言えば、子どもも見れる。
悪く言えば、「25歳まで純情を守るなんてそんなバカなwww」である。

雫がパリに行ったシーンでもホテルを別にとってる。聖司は一人暮らしだというのに……。
松坂桃李主演「娼年」での変態プレイの数々が頭をよぎってなおのこと信じられない。(桃李の演技はあくまで桃李なので……)

まぁ時代も時代、密に連絡取り合ってないからその辺はまだ距離感があるのかな。
でもやっぱり一回別れてなんやかんや経験して、最後元サヤに戻りました…が一番リアルなんだよなぁ。

ただ、実写版聖司くん中学時代が一番ストーカーでした。

ちなみに、終盤の桃李演奏シーンはドラマ「カルテット」の路上演奏シーンみたいで、そこだけ見ると非常にワクワクして良かった。
あまりに突然で本筋とは全然関係ないんだけど。

地球屋のおじいさんの正解:近藤正臣


救いもある。
地球屋のおじいさんこと西司朗役の近藤正臣さんは、ついジブリアニメファンもニッコリしてしまうお茶目じいさんだった。
おじいさんがいなかったら雫は大人になってもダメダメだったよ。

ちなみに、原作はもっと渋くて存在感の薄いおじいさんおじいさんしたおじいさんなんだけどね。

見せつけられる山田裕貴の振り幅


この前まで朝ドラ「ちむどんどん」でイケメンを潜めてサエないおっさん〜おじいさんを見事に演じていた山田裕貴。
今回は25歳の杉本役で登場したけど、その演技の振り幅にビックリ。
名古屋誇りのカメレオン俳優だぎゃあ。(ちなみに後輩の同級生である)

ファンタジーに馴染んだ純粋無垢、空気が読めないけどめちゃくちゃいいやつ。
原作でもアニメでも「聖司くんよりカワイイし好き!」と愛されたこの男は実写版でも健在とさせた。
ありがとう、山田裕貴。ありがとう、杉本。

内田理央の夕子も可愛かったね。
けどそばかすは令和のメイクでカバーされて可愛すぎ、親友ムーブ100点すぎて雫のために存在してる感じにはなってたな。うーんご都合主義。

朝ドラ大河出演の中学生子役


中学時代を演じる子役たちは、既にNHKの朝ドラや大河で活躍する実力派の面々。
だけどちょっと演技やキャラ付けがわざとらしすぎて、つい見てるこっちが恥ずかしくなる感じになっちゃって。
この子たちが問題じゃなくて、ちゃんと丁寧に演出してほしかったな。
中三なんて多感な時期を子どもっぽく描きすぎた。

中学生雫役・安原琉那ちゃんは朝ドラ「スカーレット」で主人公の妹・直子の子ども時代役。
中学生雫が「私、おっちょこちょいの元気いっぱい主人公!悩んだりもしたけど私は元気です!」みたいなキャラになっちゃってた。おいおいまた作品が違うだろ。

中学生杉村役・修次郎くんは朝ドラ「半分、青い」ではくりぃむ有田の息子役として出ている。
雫役・清野菜名が演じる裕子が亡くなってしまった後での登場なので共演はしてないし、今回も時系列が違うので共演はしてないけど、勝手に繋がりを感じる朝ドラおばさんです。

そして、中学生聖司役は、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で若くして殺されてしまった北条政範役が記憶に新しい中川翼くん。
これがまぁキザで鼻につく。
少女漫画だから、作画がイケメン二次元だからよかったんだけど、ちょっと三次元補正してリアリティ持たせてほしかったなって思う。
ここは忠実じゃなくていいし、なんならこれ以上にストーカーだったし。

所感:実写&未来版にしてはファンタジーすぎました


結局朝ドラ以上にご都合主義ファンタジー。
問題解決の回収が少々雑で、「なんだかんだありましてめでたしめでたし!」って。
あんなに風呂敷広げて〜?あれ山田裕貴また巻き込まれてるな?
まくとぅーそーけーなくるないさー#ちむどんどん反省会。

つまるところ、原作もジブリも好きな人が描いた二人の未来の二次創作のひとつと捉えたら、綺麗な映像作品。
これがふたりのリアルな未来の最適解かというと過去描写も含めてちょっと違う。
そんなところでした。

ワーワー言いましたが、総じて言えばオタクなので「新たな解釈が見られて良かった」という感想になるわけです。

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